ホテル情報
Altes Stahlwerk Business & Lifestyle Hotel
- Add
- Rendsburger Straße 81·24537 Neumünster
- TEL
- +49 (0)4321 55 600
- info@altes-stahlwerk.com
- URL
- http://www.altes-stahlwerk.com/
ノイミュンスターは、バルト海と北海に挟まれるドイツ最北端の州、シュレースヴィヒ=ホルシュタインの小都市。19世紀には「ホルシュタイン地方のマンチェスター」と異名をとるほど、繊維や皮革産業で繁栄していたという。21世紀の今日は、ノイミュンスターと聞くと、まず頭に浮かぶのはデザイナー・アウトレットセンターぐらいで、正直なところ何も見所がないイメージ。ハンブルクからは1時間もかからないが、ハンブルク育ちのヘニングさんでさえ、一度も行ったことがなかったのだった。それがこのユニークなビジネス&ライフスタイルホテル「アルテス・シュタールヴェルク」(旧製鋼所)と、ひっそりと息づくプライベートの美しい彫刻公園の存在を知って、前から計画していたリューベックへの週末旅行を急遽ノイミュンスター経由にしたのだった。
「旧製鋼所」という名前からも察しがつくように、前世紀の重工業の残骸をホスピタリティー空間へと再開発したホテルだ。レンツブルガー通りのホテルのエリアは、1926年に建設された「ノルディッシェ・シュタールヴェルク(北の製鋼所)」の工場だった。この製鋼所は、船舶や大機械のパーツを生産していたが、2001年に閉鎖を余儀なくされ、その後は施設の廃墟化が進んで行った。金属目当ての泥棒が後を絶たず、グラフィティアーティストには、願ってもいないクリエーションの場となり、秘密のパーティー会場となり、インダストリー廃墟独特のロマンにファッション雑誌の撮影にも使われたりした。ついに放火による火災事件で建物崩壊が危惧され、解体の決定が下り、2008年にディベロッパーのヤン・ピンノとシュテファン・ヨハンゼンが800万ユーロを投資し、再開発プロジェクトを発足させたのだった。2012年に客室やセミナー&イベント用の新築2棟と、オリジナル建築のレストランの計3棟から成るホテルコンプレクスが完成する。
建物の大半は、保存状態が悪く取り壊さなければならなかったが、かつては砂吹き付け機で鉄鋼パーツが研磨されたホールは再利用可能で、迫力ある天井採光のアトリウム的大空間に、コンプレクスの心臓部となるレストラン&バー「摂氏1500度」(1500 Grad Celsius)ができた。毎月ドイツの人気シンガーソングライター等のコンサートも開かれる。旧製鋼所の歴史を暗示すべく、スチールの溶点の温度を名前に選んである。走行ウィンチ台車なども残り、工場建築独特の魅力を今に伝える。建築家のヴィレム・ハインとトーマス・ラーデホフは、古いインダストリー建築への敬意を忘れず、旧製鋼所から放たれる無二の雰囲気を、未来へも心地よく残すことをコンセプトに、元来は力強い男達が汗だくで労働に勤しんだ場所を、今のライフスタイル表現の場所に変貌させる課題へと挑んだ。現場のインダストリー廃墟の美が、デザインのインスピレーションの源だった。
インテリアは、キール・ムテジウス芸術大学の学生を対象にしたコンペで集まったアイデアを活かして、デザイナーのラインホルト・アンドレセン(在デンマーク)が担当。オリエンテーションデザインとしての館内のコンクリート壁をクールに彩るグラフィティが楽しい。トイレもルームナンバーのグラフィティも凝りに凝っている。これらはインテリアデザイナー(愛称ナージー)と、イギリス人のアーティスト、ブラッド・ショーン(愛称ショーニー)のコンビ「NASH」のなせる技だった。研磨ホール内のトイレで男性と女性の手洗いコーナー間のパーティションのデザインが、新しいコミュニケーションの可能性を生んでいる。モザイクのようにレーザーカットした錆スチール板の孔から向こう側で手を洗っているゲストと思わずチラリと顔合わせ。その予期せぬ瞬間に誰もが笑ってしまう。この出会いが縁で、いつかカップル誕生となるかもしれない。
7階建ての新築客室棟は、S、M、Lの3サイズのダブルルームと、XLのスイート3室で、計100室。パープル、オレンジ、グリーンとフロア毎にテーマカラーがあり、部屋のインテリアはインダストリー文化をコンテンポラリーに解釈したデザインに仕上がっている。ベッド上の壁にも飾られている写真シリーズは、ノイミュンスター在住の写真家、マリアンネ・オープストの作品。
2016/09/01時点の情報です