ホテル情報
Sofitel Vienna Stephansdom
- Add
- Praterstrasse 1 1020 VIENNA, AUSTRIA
- TEL
- +43-1-906160
- FAX
- +43-1-906162000
- h6599@sofitel.com
- URL
- http://www.sofitel.com
ウィーン最新のデラックスホテル「ソフィテル・ヴィエナ・シュテファンスドーム」は、ドナウ運河岸に高さ75mのウルトラモダンな雄姿を見せる。ジャン・ヌーヴェルが建築もインテリアもトータルデザインしたプロジェクトで、過去の歴史を今に呼吸し、未来へオリエンテーションするウィーンの街のスピリットが建築に表現された。そしてウィーンの百万ドルの夜景をプレゼントしてくれるホテルでもある。
世界最大級のフランス系ホテルグループ、アコー(Accor)社のヨーロッパにおけるフラッグシップとして構想された。ホテルが入る建物全体は通称「ヌーヴェル・タワー」と呼ばれている。オーストリアの大手保険会社ウニカ(Uniqua)が1950年代の本社ビルを撤去し、2004年の建築コンペで圧倒的支持を受けたヌーヴェルの案を実現した。このモニュメンタルなガラスの斜塔に、3Fまではインテリアブランドのショップやデザインギャラリーが集まるライフスタイルセンター「シュティールヴェルク」(Stilwerk)がフロアを占める。
このプロジェクトはウィーンの都市開発問題を考えると、その社会的な意味も軽視できない。ホテルのあるウィーン第2区レオポルトシュタット(Leopoldstadt)には、バルカン諸国からの移民やユダヤ教徒が多く暮らし、地図上ではドナウ運河を挟んで中心部の第1区に隣接するが、運河の境界線が次第にリッチな旧市街との繋がりを隔てるかに相互関係が薄れてきていた。ヌーヴェル・タワーの魅力が両地区の橋渡しとなり、住民の交流を促している。ターボア通りを挟んでハンス・ホライン設計の「メディアタワー」と、微妙に傾く二つのビルが、レオポルトシュタットへの新しい“アーバンゲート”をクリエートしてもいるのである。
「グレーはデザインのスピリットを表現してくれる色」と言うヌーヴェルだが、ホテルのインテリアは全館通して様々なニュアンスのホワイト、グレー、ブラックと徹底して無彩色と抽象的なフォルムでコンポジションされた。そのヌーヴェルの建築空間と対極にありながら、同時にパーフェクトにハーモニーしているのが計2,000㎡に及ぶピピロッティ・リスト(Pipilotti Rist)の壮大なメディアインスタレーションである。フレスコ画に代わる21世紀の天井画ともいえる。リストは「人間の内面はとてもカラフルだから」と、それは鮮やかな色彩感覚で、超現実的なビデオワークを組み込んで、絵画的な光る天井(LED)をクリエートした。エントランス、ウィンターガーデン、そして圧巻は最上18Fのパノラマレストラン&ラウンジバー「ル・ロフト(Le Loft)」だ。外と内の区別がつかなくなり、天井に柔らかく張ったテントのようなメディアアートが、透明ガラスの壁を越えて宙にまでどんどん広がり、ウィーンの街の上空を無限の色彩で覆い尽くしてしまうかの視覚魔法にかかってしまう。ファサードのガラスはガラス光天井を美しく見せるために無反射で、可能な限りの透明度と薄さが要求された。時間にあわせて光量やメディアアートの演出を操作できる。総ガラス張りで日よけがないと夏の暑さを懸念しそうだが、そこは内側と外側のガラス間に80cm幅の緩衝装置となる層があり、熱気と冷気が換気される。食事の方はフランスの名シェフ、アントワーヌ・ウェスターマンのアルザス料理をベースにしたメニューコンセプトで、席の確保もなかなか容易でないほどの人気だ。
フランスの植物学者&ランドスケープデザイナー、パトリック・ブラン(Patrick Blanc)は、防火壁を垂直庭園「グリーンウォール」に変貌させ、四季折々に2万種の植物が壁の風情も変える。
ヌーヴェルはサステイナビリティの観点でも新しい試みを実践してみせた。例えばウィンターガーデンの斜面ファサード、シュテファン大聖堂のゴシック建築屋根のパターンを新解釈して、不規則な菱形グリッドにデザインされたが、夏に外気が26℃を越えるとガラスが熱くならないよう、既存の近くの古い井戸水を霧雨にして冷却される。井戸水冷却はオーストリアで初めて応用された技術である。省エネにも優れ、夏は温水全てが屋根の太陽熱発電で賄われ、更に地熱発電装置も備える。
ヌーヴェル・タワーのファサードは、南側の旧市街に面した正面がグレー、西がブラック、北がホワイトで、東が透明なマテリアルで構成され、それに一致して客室(全182室)も南側はグレー、北側はホワイトにトータルカラーコーディネートされている。そしてスイート3室は全てがブラック。建築家は、本当は部屋の半数を真っ黒にしたかったそうだが、ホテル側の強い懸念でスイートのみに。壁や天井には部屋毎に異なるオリジナルコンセプトの繊細な鉛筆の壁画が、ウィーンの若手アーティストの手で描かれた。部屋の窓からもその部屋からだけの風景画が窓枠内に浮かぶ。“ソフトタッチ”をコンセプトに優しい手触りのインテリアだ。バスタブのデザインも建築同様にシャープで幾何学的だ。ただ短足だと、出入りにヨイショと結構な技が要求される。
部屋の白は本当にほんの少しの汚れや表面が擦られただけでも気になって仕方ないものだ。角も丸みを帯びておらず角だっているのでそれも破損しやすそう。実際に既にソファの表面には薄らと垢汚れした部分が見受けられた。この部屋ほどなぜかルームメイドや掃除スタッフの苦労が思いやられたことはなかった。チェックアウトの時に「お掃除やメンテナンスが大変ですね。」と労うと「大丈夫です。最初から計算に入れてありますので。」とのこと。余計なお世話だったかと思いながらも空港でのフライト待ち時間にもやっぱりお部屋の掃除の心配を続けていた。帰宅して、自分の住まいに白い家具がないことに、改めて安堵したのだった。
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2011/07/01時点の情報です