ホテル情報
Van der Valk Hotel Hildesheim
- Add
- Markt 4, 31134 Hildesheim
- TEL
- +49 (0)5121 300 0
- FAX
- +49 (0)5121 300 444
- info@hildesheim.valk.com
- URL
- http://www.vandervalk.de/de/hotel-hildesheim-hannover.html
ヒルデスハイムは家から車で30分もかからずに着いてしまう。大聖堂(樹齢1000という薔薇が茂る)と聖ミカエル教会という世界文化遺産が2つもあるのだが、こう近いといつでも出かけられると思っているうちに、かなりの御無沙汰をしてしまっていた。そうしたら今年は聖ミカエル教会がなんと設立1000年を迎える記念の年というニュースを聞いて、ヒルデスハイムで週末を過ごす決意を固めた。「ファン・デル・ファルク」はヒルデスハイムの街の中心にあるそれは美しいマルクト広場に面した唯一のホテル。広場には中世の木組みの家から4世紀に渡る建築スタイルが肩を並べ寄り添う。1945年に空襲で破壊された広場は、1980年代に職人技術の粋を尽くしてファサードが戦前の状態に復元された。広場の北側、ホテルは可憐なロココ様式のスタッコ装飾が特徴的な「ロココの家」を真ん中に、左の17世紀の「シュタットシェンケ(町酒屋)」と右の16世紀の「毛織り職人組合の家」という木組みファサードの3棟が繋がっている。「ロココの家」は幅がたった8m、淡いピンクとグレーの愛らしいドレスをまとった華奢な貴婦人のような建物だ。
前に来た時は「ロココの家」のファサードにまだイギリスの旧フォルテ・ホテルズの青いマークが目立っていたのを覚えている。2006年にオーナーがオランダのファン・デル・ファルクに変わってそれから大規模なフェイスリフティングが行われ、ヒルデスハイムが誇る世界遺産と広場の美しさに相応するホテルが誕生した。
1939年ファン・デル・ファルク夫妻がオランダのフォールショーテンにレストランを開業したのが現在オランダ最大のホテルガストロノミー会社の始まりだった。
夫妻は11人もの子宝に恵まれ、第2次世界大戦後に事業を広げていった。今では孫、曾孫の世代が経営陣。ブランドと切っても切れないシンボルマークになっているのが動物園などでも人気者の巨嘴鳥(オオハシ)だ。ファルクという名字の意味からすると鷹や隼の鳥がシンボルマークで当然ではないかと思ったが、終戦後に鷹をマークにしてはナチスドイツの第三帝国の鷲の紋章のイメージと重なりすぎてしまうことを恐れたのだそうである。巨嘴鳥は鮮やかな色彩の大きなクチバシを持つ熱帯地方の鳥で、人懐っこくフレンドリーな性格がホテル業にもぴったりだ。
マルクト広場からホテルに入ると、外観からは想像もつかない奥行きの深さに驚かされた。ロココ時代に典型的な岩や貝を象ったロカイユ装飾にモダンなエレメントを加味してネオロココなサロン風の空間がまず待っている。左手のちょっとキッチュなシルバーの光沢ある男神像のコーナーはバーへ、右手の女神像のコーナーはレストランへと続く。チェックインをしにメインエントランスホールへと奥へ抜けていくと、最初は天井が低かったのに砂岩のアーチ構造の先には突然2層吹き抜けで、木張りの天井や練鉄の巨大なシャンデリアなど中世からの歴史と木工職人芸を感じさせる重厚な空間が開けた。上のギャラリーは書棚もあるライブラリーになっている。茄子紺色のウォッシュ加工されたベルベットのチェアやメタリックブルーのレザーのチェアといった異分子的素材と色のアイテムがクラシックな木と革のナチュラルブラウンな全体を小気味よくブレイクして現代と繋げている。
木組みの「毛織り業者組合の家」の1階がレストラン「ギルデハウス」。朝食もここだ。もう少し暖かくなれば広場にもテラス席が出る。北ドイツの大農家の古い屋敷からのオリジナルの内装が運ばれ、中世の趣ある木の天井や壁には見事な彫り細工やインレイ細工が施されている。純白で光沢あるレザーの椅子やレース模様のモダンなランプが好対照をなし新古が調和する。今回はジュニアスイート宿泊と3コースのディナーに朝食込みが2人で180ユーロというアレンジを予約してみた。メニューから選んだのはスターターにサーモンのカルパッチョとグリルした山羊チーズのサラダ、メインにアルゼンチン産ブラックアンガス牛のランプステーキとラインハルツヴァルト産ニジマスのムニエル。デザートにはグラン・マルニエ風味けしの実パルフェ、アルマニャック入りドメスチカすももコンポートとホワイトチョコレートソース添えとブラッドオレンジのタルト、ベリーコンポートとレモンシャーベット添え。広場を眺められるジュニアスイートに泊まれるなら満足と食事の方はどうせパッケージだからとあまり期待していなかったらその全く逆で大満足させてもらうことになった。
昔の「町酒屋」だった木組みの家の1階がお酒と葉巻を楽しめる「ハヴァナ・バー」と「シガーラウンジ」になっている。壁には鏡板を張り、紫のカーペットとカーテン、牡丹色のベルベットのチェアに黒いネオバロックなシャンデリアの下で映画に出てくる昔の娼館の雰囲気もちょっと漂うゴージャスさ。ドイツでは公の建物内や飲食店内での喫煙は禁止されているので、ホテルのシガーラウンジのように喫煙可能な施設は酒と煙草を切り離せない人には救いの場に違いない。
ファン・デル・ファルクがホテルを譲り受けてから74室のリニューアルが終わって、エレガントなインテリアでバスルームも快適な部屋に変貌している。客室のカテゴリーはクラシック、スーペリア、デラックス、エグゼクティブ、ジュニアスイートと5つあり、暖色系にまとめた部屋、トルコブルーのモダンな部屋、白黒&シルバーを基調にしたクラシックな部屋、ベージュ系の落ち着いた部屋、ロマンチックな装飾柄の部屋などが揃う。全109室のうち33室が広場に面していて窓からの眺めがいい。ジュニアスイートはコンテンポラリーかクラシックかインテリアのスタイルを選べるが、「ロココの家」のフロントに位置するコンテンポラリーな方のジュニアスイートを是非ともお薦めしたい。ロンドンやバルセロナなら普通だろうが、ヒルデスハイムだから部屋の中のクールで未来的な世界と窓向こうの歴史世界とのギャップにホテルのファサードがタイムトンネルにも感じられてくる。
これまでも何度か空間構成がデュプレックス(メゾネット)の部屋に泊まったことはあったが、どのホテルでも下のスペースはリビングや水まわりで、階段を上るとベッドルームというスタイルで、このように一番高いレベルにバスルームがまさに君臨しているのは初めてで驚嘆してしまった。ワオー!ガラスウォールを使い可能な限り部屋に対してオープンな作りだ。部屋より数段下がっていてトイレやクローゼットを配したエントランスエリアの上が洗面&バスになっている。ウォークインスタイルで広々と明るいシャワー&バスのブース。ヘッドシャワーが2つ仲良く並んでいて夫婦でおしゃべりしながら同時に朝の目覚ましシャワーを浴びられる。スタルクのデザインしたフリースタンディングのバスシャワー水栓を使うのも初めてだった。水栓から勢いよく流れるお湯のサウンドが実に爽快だった。
お風呂に入りながら部屋を見下ろせる。ガラスのバルコニーで歯を磨きながら部屋を見下ろせる。本当に色々な眺めを楽しめる部屋だ。黒いベルベットのラウンジチェア、テーブルの上の白い花瓶に黒い造花のアレンジとか、暖炉のようにTVをはめ込んだ壁の赤く繊細な装飾画や、バスタブ外側のTANGOのグラフィック、黒い長いフリンジのランプシェード、真っ赤なサテンのクッション、ブラック&ホワイトを基調に鮮烈な赤をアクセントにしてレトロフューチャーなデザインに仕上がっている。
部屋のドア脇のカウンターデスクのトップとミニバーとの間にコーヒーのセルフサービス用にオレンジ色のポットとカップのセットが用意されていた。ハンブルクの1866年創業の老舗コーヒー会社、J.J.ダルボーフェンのだ。実際には使わなかったのだが、ホテルの部屋で不意にこんな小さなステキな物を発見すると特に女性はとても機嫌がよくなるものではないか。
チェックアウトしてホテルを出ると丁度土曜日だったのでマルクト広場は花屋さん、肉屋さん、八百屋さん、魚屋さんetc...が並ぶ青空市場でにぎわっていた。毎週水曜と土曜に青空市場が立つ。近郊の畑で今朝収穫したばかりという葉っぱもみずみずしい蕪が出ていた。ホテルで過ごしている間はなぜか意識の外にあったのだが、30kmしか離れていないハノーファーから来ているのを思い出して夕飯にでもと蕪を一束お土産に買ったのだった。
2010/04/15時点の情報です