ホテル情報
ARCOTEL Camino
- Add
- Heilbronner Strasse 21, 70191 Stuttgart
- TEL
- +49 711 258 58-0
- FAX
- +49 711 258 58-2200
- camino@arcotel.at
- URL
- https://camino.arcotel.com
フォルクスワーゲンの自動車テーマパーク「アウトーシュタット」(所在地:ヴォルフスブルク)が大成功しているのに負けてはいられないと、この数年で他の自動車メーカーもこぞって新しいミュージアムやブランドセンターを開設している。今年の夏は4泊で4ブランド(メルセデス・ベンツ、ポルシェ、BMW、アウディ)のスピリットを連続体験するドイツ車ツアーを試みた。ロマンチック街道ならぬ"アウトー街道"だ。私のように機械音痴でテクノロジー音痴な人間でも、歴代のモデルを熱心に鑑賞している旦那様を邪魔することなく、未来的な建築やドラマチックな展示空間の演出だけで文句なく楽しめた。
さてハノーファーを早朝に出て、まずシュトゥットガルトへ向かいドイツを縦断。1泊目のホテルは「カミーノ」。「カミーノ」とは聖ヤコブの墓を詣でに、フランス南端のサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからピレネー山脈を越えスペイン北西部のサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう約800kmもの巡礼路のこと。このホテルは今年設立20周年を祝ったオーストリアのアルコテル・チェーンに属する。プロジェクト毎に各都市の歴史文化に根ざしたデザインコンセプトを実践しているチェーンだ。今は亡きアルコテル創立者ライムント・ヴィンマー氏が生前に巡礼を敢行したそうで、ホテルが巡礼の旅路の出逢いの場、休息の場のような心温まる場であってほしいという氏のビジョンに捧げたプロジェクトである。ロビーの壁にも巡礼者の姿を描いた大きな絵画が掛けられ、チェックインでようこその代わりに巡礼者達が互いに掛け合う言葉「ボン・カミーノ」(よい巡礼の旅を)と挨拶されてもおかしくない。ここが自動車文化巡礼の旅の始まりに思えてきた。
ホテルは中央駅から歩いて数分と交通の便もいい。市街からメルセデス・ベンツ博物館へ向かう国道27号線上のハイルブロン通りに面している。歴史を感じさせる左右対称的な建物が中央のモダンな塔の新築で繋がる。表通りからもラウンジの吹き抜けホールを照らすシャンデリアのピンクのゴージャスな輝きについ目を引かれる。古い建物は19世紀末に鉄道職員と郵便局職員のために建設された団地「ポスト村」の浴場&洗濯場であった。他の建物は第二次世界大戦で焼けてしまったがこの2棟は戦火を逃れる。2005年に着工しオープニングは2008年1月。(設計:フランクフルトのクリストフ・メクラー建築事務所)
ウィーン応用美術大学でデザインを教えているハラルド・シュライバーがインテリアを担当、アルコテルと長年に渡りコラボレーションしているクリエーターだ。巡礼路の土の色合いを反映したファニチャー類もシュライバーのオリジナルデザイン。カーテンやカーペットも特注で各々のテーマにあったグラフィックが目と足下を楽しませてくれる。サンティアゴ巡礼者のシンボルである帆立貝("ヤコブの貝")を石鹸入れに使って、バスルームにもほのかに巡礼のテーマをアレンジしている。
シュトゥットガルトはミース・ファン・デル・ローエやル・コルビジェといった20世紀を代表する建築家達の白い近代建築が立ち並ぶ住宅団地も有名だ。この1927年に一般市民のために建設された「ヴァイセンホーフ・ジードルング」はモダニズムの建築デザインの理想を体現していた。ホテルのレストランが「ヴァイセンホーフ」なだけでなく、客室にもこのテーマを取り上げた部屋がある。私達が泊まったのはスタンダードのダブルで"カミーノ・コンフォート"のカテゴリー。ベッドに置かれたグレーのクッションや白いカーテンが20世紀のデザインプロダクトやデザイナー家具の数々がイラストされたパターンで驚いた。夕食で街へ出る前にまずはカーテンとにらめっこして、誰のデザインかわかるか夫婦でデザインクイズ合戦に熱中してしまった。
時間節約のためホテルで朝は食べないことにしていた。部屋の壁にまるで小さなアートオブジェのように用意されている赤いリンゴが嬉しい。リンゴのメタルのホールダーにはよく見ると「よい一日を」と何気なく暖かい言葉が刻まれている。まだ東京にいた頃の和裁の先生が「朝一番のリンゴ1個が健康のもと」と話していたのを思い出した。ガブリと一かじり。甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がり眠気も完全に覚めた。これでビタミンも確保したし、いざ自動車ミュージアム見学へ出かけるとしよう。
2009/11/24時点の情報です