ホテル情報
Hotel Rival
- Add
- Mariatorget 3, Box 17525, SE-118 91, Stockholm
- TEL
- +46 (0) 8-545 789 00
- FAX
- +46 (0) 8-545 789 24
- rival@rival.se
- URL
- www.rival.se
連想ゲームで"スウェーデン"とヒントを出されて即座に"アバ (ABBA) "と答える人も少なくないのではないだろうか。アバは1970年代、私もまだティーンエージャーだった頃に次々と大ヒットを飛ばし世界を冠した伝説的なスーパーグループ。特にアバのファンだったわけでもないのだが、アバの元メンバー、ベニー・アンダーソン (Benny Andersson) がオーナーのホテルがあると聞いては好奇心を押さえられず、「ホテル・リヴァル」に1泊せずしてスウェーデンを去るわけにはいかなかった。 リヴァルは2003年にストックホルム初のブティックホテルとしてセーデルマルム島のトレンディな地区にオープンした。緑の茂る広場マリアトリエット (Mariatorget) に面する。1937年のアールデコの建築「リヴァル・シネマ」がオリジナルの魅力を壊さないように改増築された。 (建築:Bergkrantz Arkitekter、インテリア:Ahlgren Edblom Arkitekter) 階段のエレガントな手すりやカクテルバーの半円のカウンターなどの造形要素が歴史を垣間見せる。「リヴァル・シネマ」はストックホルムにそれまでなかった類いのアーバン・プロジェクトで、映画館、ホテル・アストン (Hotel Aston) 、カフェ&レストラン、パティスリー、アパートが複合し最先端の施設だった。ホテルにはリニューアルされた本格的なシネマ (700人収容) にお洒落なビストロ、カクテルバー、カジュアルなカフェ&ベーカリーが揃う。当時に負けない華やかさが今に蘇った。一時は近所の高級マンションの住民から音楽がうるさいと苦情が入り、ホテルのパブリックスペースを4ゾーンに分けて各々個別に音量を調節できる新システムを導入してトラブル解消したという。 チャールストンでも踊っているかのようにリズミカルなロゴやグラフィック (デザイン:Maria Dahlgren) から、コラージュ・アートのようなパターンの廊下のカーペット (デザイン:Carouschka Streiffert) まで、リヴァルのインテリアはカラフルでエンターテインメント性に富み、気取らず楽しい。アバが活躍していた1970年代に流行したレトロなデザインではない。歴代のスウェーデン映画の名場面がパネル写真として客室の壁を飾っていたり、ビストロの壁には924人もの映画スターのポートレートがアレンジされていたり、シネマのテーマがインテリアにも扱われる。アバのヒット曲で構成されるミュージカル映画『マンマ・ミーア』が日本でも大ヒット上映されたが、去年の夏にスウェーデンでのプレミアとその祝賀パーティーが開かれたのはもちろんここリヴァルでだった。スペシャルゲストとしてアバの元メンバー4人が久しぶりに集い、ホテルのビストロのバルコニーから主演のメリル・ストリープやピーアス・ブロスナンと並んで笑顔でファンに手を振ったのだった。 デザインホテルやブティックホテルというと、とかく民芸調のアイテムを組み合わせることを避ける例がほとんど。ここではエントランスホールやビストロにペルシャ遊牧民の素朴だけど独創的な敷物が21世紀のデザイナー家具と対話している。自然の草木染めの色の暖かさ、複雑な幾何学模様を織り上げる人間の手の暖かさが空間に伝わる。ベーカリーも併設されているため朝食のクロワッサンも自家製の焼き立てで抜群の美味しさ。これだけ美味しいということはバターの量がかなりだろうけど、これほど美味しいクロワッサンはドイツではなかなか口にできない。つい2つも食べてしまった。 明るい客室 (全99室) はコンテンポラリーでもクラシックな雰囲気を持つインテリアで、ラグジュアリー感よりは快適性を重視してデザインされた。部屋に入るとすぐ左脇のテーブルの上にテディベアがちょこんとお行儀良く座って迎えてくれた。予想外の可愛いぬいぐるみの登場に頬の筋肉が緩んでニコっとなる。バスルームでもガラスの可愛いタオル用フックなど小さなサプライズに出会うことになる。"You are the Dancing Queen, Young and sweet only seventeen…"と、鼻歌を唱いながら気分上々でシャワーを浴びる。と、メタボなお腹のフォルムに『ダンシングクイーン』がヒットしてからもう30年以上も経っていることをひしひしと実感するのだった。
2009/05/01時点の情報です