ホテル情報
Grand Hyatt Berlin
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- Marlene-Dietrich-Platz 2, Berlin 10785
- TEL
- +49 30 2553 1234
- FAX
- +49 30 2553 1235
- berlin.grand@hyatt.com
- URL
- berlin.grand.hyatt.com
赤いポインセチアの生花で造形したクリスマスツリーに孔雀が戯れる。壁にかかる青いフレームとのコントラストも鮮やかだ。泊まったのは去年の大晦日だったのだが、グランドハイアットベルリンのロビーに飾られたこのクリスマスツリーがハイセンスで、せっかくだからクリスマスの時期になったらお見せしようと1年間写真をキープしておいた。壁の青いフレームはドイツのアーティスト、ゲロルド・ミラーの作品、絵画と彫刻の境界線にある定義しがたいオブジェクトだ。グランドハイアットベルリンのロビーや会議・宴会用フロアではダイムラー・アートコレクションから厳選されたコンテンポラリーアートが空間と対話し理性的な空間に彩りある緊張感を与えゲストの感情を刺激する。
ホテルは赤みを帯びた砂岩のファサードで8階建ての建物、3年の工期を経て1998年10月にグランドハイアットのヨーロッパ進出第1号としてオープンし、今年10周年を迎えた。プリツカー賞に輝く建築家ラファエル・モネオの設計で、インテリアはハンネス・ヴェットシュタインがデザイン、スペインを代表する建築家とスイスを代表するデザイナーとの異色のコラボレーションが実ったホテルだ。このホテルを利用するのは初めてではないのだがレセプションに向かう途中でまたしても思わず立ち止まってしばしモネオが仕掛けたガラスの採光構造を眺めてしまった。ドイツ・ロマン主義の画家カスパー・ダーヴィット・フリードリヒの「氷の海」に描かれた氷が天井を突き抜け建築に突き刺さったかに鋭い。そしてオパールの宝石の柔らかい光をロビーに導いてくれる。
このグランドハイアットはベルリン国際映画祭のメイン会場があるマレーネ・ディートリッヒ広場に面し、映画祭の期間中はプレスセンターが設けられ、NYの建築家トニー・チーが改装した会議・宴会場でスターの記者会見も行われる。ベルリン・フィルハーモニーも目と鼻の先、TVでも生中継される大晦日恒例のジルベスター・コンサートに出かけるにはベスト・ロケーションだ。ベルリンのカルチャーライフに欠かせないだけでなく、スポーツ界でも人気のホテルだ。ディレクターのヒュルスト氏によると「2006年のW杯でスタッフ全員が熱烈なサッカーファンになってしまった」そうで、地元サッカーチーム「ヘルタBSC」ともパートナー契約を結んでいる。
ホテル屋上の「クラブ・オリュンポス・スパ&フィットネス」のプールは10年前も今もベルリン一の眺めのいいプールだ。ここでプカプカしながら新年を迎えるのもいいかと思ったのだが、残念ながら通常通り22時でクローズ、例外は許されなかった。屋上からベルリンの街中で打ち上げられるニューイヤーの花火を堪能するにはホテルのレストラン「ヴォックス」で大晦日の特別プログラムを予約しないといけないということ。朝食は「ヴォックス」だけでなくロビーの暖炉のあるラウンジに続く「ティツィアン」や2階の「ライブラリー」の3箇所から好きな場所を選べる。「ヴォックス」のバーはドイツの有力グルメ雑誌『ファインシュメッカー』から今年のベスト・バーに選ばれている。ジャズ、ブルースの世界的ミュージシャンの写真を背景に夜はライブ演奏で雰囲気も格別。バーに揃っているウィスキーのリストが240銘柄と一体どれを試そうか真剣に悩んでしまった。
ハンネス・ヴェットシュタインの客室(全342室)のデザインはさり気なく上質感をアピールする。フロアとバスルーム間、ベッドルームとバスルーム間の二つの扉を開けると全スペースがオープンに繋がる。壁にはベルリンのバウハウス資料館蔵のバウハウス・アーティストのアヴァンギャルドな写真が7点、ベルリンの黄金の1920年代のスピリットが伝わってくる。バスルームはグレーの大理石と桜材をコンビネーション。曇りガラスの引き戸の奥がトイレだ。ユニークなのは透明ガラスの引き戸を開けて入るバスタブ&シャワーのコーナー、まるで日本のお風呂場のようにバスタブ前の床面をビチョビチョにできるホテルのバスルームは珍しい。洗面コーナーにまでTVが付いていてこれだけは視覚的にちょっと邪魔ではないだろうか。
ヴェットシュタインはスイスデザインの伝統を受け継ぐデザイナー、そのデザインはマテリアルにフォルムを与えるというよりはマテリアルにヴァリューを与えるプロセスと言えるだろう。数ヵ月前に癌との闘いに敗れ50歳で惜しまれて亡くなったが、グランドハイアットにも彼ならではの精密で慎み深いデザインがあふれている。私がヴェットシュタインを初めて取材したのはデザイナーの希望でチューリヒからベルンへのスイスの汽車の中でだった。ヴェットシュタインは天国でもデザイナーという終着駅のない汽車の旅を続けているのかもしれない。
2008/12/19時点の情報です