ホテル情報
Palazzo Consiglia
- Add
- 102 St.Ursula Street, Valletta VLT1234, Malta
- TEL
- +356 2124 4222
- info@palazzoconsiglia.com
- URL
- http://www.palazzoconsiglia.com/
昨年オープンしたばかりの新しいブティックホテル「パラッツォ・コンシリア」。かつての貴族の館は、バレッタの街の歴史を400年も古いライムストーンの壁に内包する。聖ウルスラ通りのフロントファサードには、バレッタのタウンハウスに特徴的なガラリアと呼ばれる色鮮やかな木の出窓が印象的だ。建物の修復は、オリジナル建築のエッセンスを保つため最小限にメスが入り、ファサードもそれは細心の配慮で洗浄作業が行われた。レセプションからの古い石の階段など、何百年も使われ、かなり傾斜していて、下りる時ずり落ちそうになるが、それも歴史を実感できるというもの。バレッタのタウンハウスに典型的な構造の中庭が、ここでもホスピタリティー空間として大きな役割を果たす。夜にはライトアップで、ライムストーンの壁がオレンジを帯び、神秘性を増す。キニーというマルタ独特の心地よくビターな赤い炭酸飲料が、チェックイン時のウエルカムドリンクで、これを中庭で頂いていると、すっかり住人の気分になってくる。中庭から続く昔の礼拝堂のスペースで朝食となる。床が所々ガラス窓になっていて地下のスパの空間が見える。ヴォールト天井の洞窟だ。マルタ騎士団時代の200年前の鐘型の地下貯水槽が、小さなプールにリデザインされた。外観からは想像もできないのが、プールまである屋上テラスの存在。ハーバーまで視界が開け、朝焼けや夕焼けの眺めがやはり格別である。
ところで、パラッツォ・コンシリアといってもコンシリア家の宮殿というわけではない。コンシリアとは実存の人物ではなく、ホテルのデザインコンセプト上の架空の女性像だ。コンシリア嬢はとても多面的キャラクターで豊かなパーソナリティーを持つとされ、全13室のインテリアもベッドヘッドのデザインからして各々に異なる。インダストリー、エコロジー、ロマンチック、ボヘミアン、地中海、ルネサンスなどをテーマに、物語性の高いインテリアがクリエートされた。インテリアのアイテムを揃えるのにかけられた努力も並々ではない。アールヌーヴォー、アールデコ、クラシック、バロックと様々な時代のアンティーク家具に、イタリア、フランスのデザイン家具。飾られた肖像画や古美術品、工芸品の数々にもマルタの文化遺産を垣間みることができる。そしてカスタムメイドの写真のフォトウォール(壁紙)が、インテリアに新しい刺激を加える。例えばラウンジの1室は、フォトウォールの虚構のライブラリー、ただでさえ美味しいマルタ産ワインが更に何倍も美味しくなる居心地の良さだ。
今回は最もシンプルなお部屋をと「ノーティカ」(Nautica)に泊まった。ラテン語で船だから、船や航海とは切っても切れないバレッタで泊まるのに、ぴったりだ。デザインは、マルタ諸島を囲む、透き通るような青い海の美しさにインスパイアされている。カーテンを束ねるタッセルに付けられたガラスのキューブ、船のロープをイメージするグリップ、次から次へと熟慮されたディテールを発見できる。砂浜、カモメ、波、白黒の海岸写真のフォトウォールが一面の壁を覆い、部分的にベッドヘッド上部の壁に掛かる鏡に映る。鏡は、日本画を額縁に入れたような趣があり、驚いたのだった。
2017/05/08時点の情報です