ホテル情報
he Zetter Townhouse
- Add
- 49-50 St John's Square London EC1V 4JJ
- TEL
- 020 7324 4567
- FAX
- 020 7324 4456
- reservations@thezetter.com
- URL
- http://www.thezettertownhouse.com
前回のコラムで紹介したクイーンメリー2でのロンドン旅行の際にホテルを決めるのに、航海の旅にデザインイメージがぴったりのホテルはないかと探して辿り着いたのが、この「ザ・ゼッター・タウンハウス」だった。クリエイティブな空気に満ちたクラーケンウェル地区、目抜き通りからちょっと奥に入るセント・ジョン広場に面したジョージアン様式のタウンハウスが超個性的なブティックホテルに生まれ変わっている。話題の女性シェフ、アナ・ハンセンのカフェ & レストラン & デリショップ「モダン・パントリー」の斜め向かいにある。ちなみにTOTOのロンドン・ショールームへも近い。
ホテルは19世紀を生きたエキセントリックなウィルヘルミーネ叔母さんという架空の人物の家を想定して、デザインされた。明るい水色のドアを開けると、ウィルヘルミーネ叔母さんの人生の断片が空間に溢れんばかりの品々にぎっしり詰まり、濃厚な色彩のまるで骨董屋に入ったような印象だ。エントランスホール、レセプション、ラウンジ、バーといったホテルのパブリックスペースが、ことごとくプライベートな雰囲気のサロンに一体化している。壁にはウィルヘルミーネ叔母さんらしき女性の肖像画も掛かる。ウィルヘルミーナ叔母さんは、きっと異国へ憧れ、7つの海を渡り、世界中から気に入った品々を収集したのだろう。ドイツで「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」と呼ばれ、古美術品、自然物の標本まで、ジャンルを問わず世界の珍品を集めた王侯貴族の博物陳列室を彷彿とさせる。
インテリアはラッセル・セイジ(Russell Sage)のデザイン。老舗名門ホテル「ザ・サヴォイ」(レストラン「サヴォイ・グリル」改装)や「ザ・ゴーリング」(ロイヤルスイート改装)もクライアントに数える才腕だ。相互に調和するエレメントが組み合わされているわけでなく、個々の不調和なエレメントがいっぱいだが、デザイナーが「インテリアパッチワーク」と言うように、それが逆に全体として大きな調和の雰囲気を醸し出す。「カンガルーの剥製はワイト島の博物館のクリアランスセールで入手した」というように、一つ一つのオブジェクトの背後にもストーリーが潜んでいるのだろう。そう思いながら暖炉の脇に可愛いドレスを着せた剥製のネコを発見し、ちょっとギョッとして、そうしたらなぜかクイーンのボヘミアン・ラプソディーが耳の奥に響いてきた。
昔の薬局風カウンターのカクテルバーがロンドンでもすごく評判のようで、サドラーズウェルスでダンスを観て真夜中近くに戻ってくると、すごい混雑振りで1席も空きがなく、熱気に圧倒されてしまったのだが、新感覚のカクテルで超著名なミクソロジスト、トニー・コニグリアーロ氏が、このホテルバーのために12種類のオリジナルカクテル(中にはボードレールの『悪の華』も)をクリエートしたとなれば納得するしかない。また地下の「ゲームズ・ルーム」では、定期的に卓球の夕べも開催されるとか。
ホテルは全13室だけ。インテリアも各々に独創的で、ユニオンジャックがベッドにドレープされたブリティッシュな部屋もあれば、ゴールドのモザイクのバスタブがあるスイートもある。家庭科の時間に手作りしたようなドアサインやレトロな電話やラジオと、ディテールも凝りに凝っている。
このホテルはマーク・セインズベリーとマイケル・バニヤンの共同プロジェクト。彼らは2004年にタウンハウスとお向かいさんになるコンテンポラリーなデザインホテル「ザ・ゼッター」をスタートさせ、2011年に全く別のスタイルでこの姉妹ホテルをオープンさせた。そしてこの年末には、マリルボーンに次のタウンハウスホテルをお披露目とのこと。ウィルヘルミーネ叔母さんに代わって、今度は架空のシーモア叔父さんの物語がインテリアに繰り広げられるという。
2014/11/04時点の情報です